議案第3号「平成19年度宮崎県公営事業会計(電気事業)補正予算案」に賛成の立場から討論を行います。
 とりわけ、反対の討論がありました「企業局新エネルギー導入・啓発事業」に要する経費7,700万円に対し意見を申し上げます。
 
 今日の環境を取り巻く世界的な情勢といたしましては、先日、第33回主要国首脳会議「G8」がドイツで開催されました。いわゆるハイリゲンダム・サミットであります。
 このサミットでは、気候変動が大きなテーマとなり、「2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減することなどを、今後、真剣に検討する」ということで、G8各国の首脳の合意が得られたところであります。
 
 一方、我が国におきましては、太陽光発電の分野で、長く世界第1位を誇ってきましたが、2005年にドイツに抜かれ2位に転落しております。この原因は、行政による啓発・普及活動の伸び悩み等が考えられ、「このままでは、日本の太陽光発電は世界からどんどん遅れることになる。」と環境エネルギー政策研究所が指摘しております。
 また、日本世論調査会が数年前に行った調査結果では、「今後、どのようなエネルギー源を重視するか。」と複数回答で聞いたところ、太陽光発電が79%、風力発電が43%との回答を得ており、国民は環境にやさしいクリーンなエネルギーを望んでいることがわかっています。
 
 
 
 さて、反対討論がありました「企業局新エネルギー導入・啓発事業」につきましては、地球環境に優しい新エネルギーの率先導入と県民への普及啓発が大きな目的であります。
 現在、国において新エネルギーは、経済的には採算性が非常に厳しいため、新エネルギー利用等の促進に向けた法制度や、助成制度等により、地方公共団体等における新エネルギーの導入を促進している状況にあります。
 また、県におきましても、本年6月に策定された宮崎県総合計画「新みやざき創造計画」において、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量の削減に向けて、県民、行政等が一体となった取組みを推進するとともに、太陽光発電などの新エネルギーの導入を促進すると位置付けられております。
 この計画を実現するためにも、今回、当該事業により、県庁舎など県民の目に触れやすいところに、太陽光発電や風力発電等の新エネルギー設備を象徴的に設置することは、県民への啓発・普及の推進をより一層図るものであり、誠に時期を得たものであります。
 
 一方、コスト面についてですが、この事業により、企業局庁舎に太陽光発電装置を設置した場合、従来の電気料に換算すると年間に約100万円削減されます。耐用年数を20年としたときの電気量削減効果は、2,000万円であります。
 単純に、金銭面で費用対効果を考えると、全体の事業費は、7,000万円であり、その内、国費3,500万円と電気量削減効果2,000万円を合わせても5,500万円となり、1,500万円が不足することになります。
 しかし、費用対効果は、金銭的な直接効果のみならず、事業の公益的な効果を含めた全ての効果と全ての費用を対比し、事業の効率性を検証するものであります。
 この場合、費用対効果の原則からすれば、二酸化炭素の削減などの環境面での公益的な効果を計上し、効率性を検証する必要もありますので、単純な金銭面の比較だけでは十分な検証といえないものがあります。
 例えば、削減される二酸化炭素換算では、森林吸収量に換算しますと、東京ドームの2.4個分(11ヘクタール)の森林が1年間に吸収する二酸化炭素の量は、約39.6トンに相当します。
 また、原油換算した場合では、年間79万円、20年間で1,580万円相当が削減されますので、これらの公益的な効果を検証し、費用対効果に反映させると、県費投資分は相殺されることになります。
 それでも、国庫補助3,500万円の投資に対しペイされないと反対討論の中で主張されました。環境問題の実際の効果は、50年あるいは100年後に現れてくるのかもしれません。地球規模で真剣に考えなければならない環境問題を一点だけを見て費用対効果を判断していいものか疑問であります。
 
 今日、行政サービスにも採算・効率・競争が求められている現状にあります。 私は、あらゆるすべての行政に金銭面だけでの費用対効果を求めるのはいささか疑問があるところであり、公益的な効果を検討しながら費用対効果を検証すべきだと考えます。
 
 
 
 医師不足、経営赤字に悩む本県の公立病院の現状を見るとき、果たして地域医療が将来にわたり保障できるのか危惧されるところです。もちろん、無条件で赤字経営が良いということではありません。命に関わるものを競争原理にさらしていいのでしょうか。医療・福祉が費用対効果で図られていいかと言うことです。未来を担う子どもたちへの先行投資とも言われる教育費についてもしかりであります。
 また、便利さと豊かさを求め、採算と効率・競争を徹底してきた高度成長時代から今日までを見たとき、大量生産と大量消費、過剰な投資と開発は、地球温暖化という環境破壊を生みました。環境破壊は人間の手によってあっという間に進みましたが、破壊された環境を元に戻すためには莫大な時間とお金を必要とします。
 
 地球の気温が上昇するという人類の生存に関わる地球規模の環境問題、いわゆる地球温暖化対策は、今や全世界で取り組まなければならない喫緊の課題です。地球温暖化が、気候変動や海面水位の上昇、食料生産や人体の健康への悪影響など様々な問題につながっていくことはご承知のとおりです。県の施策として、地球温暖化防止に取り組むことは当然のことであり、むしろ知事部局が行政の役目として県民に広くPRしなければならないと考えます。
 今回の事業は、県民の税金は入っていません。本来、知事部局で実施すべきものを「企業局の企業努力による社会貢献」と考えて良いのではないでしょうか。
 
 
 
 宮崎は「太陽と緑の国」というキャッチフレーズを持っています。そのイメージアップのためにも県民運動としてこの太陽光発電の普及をもっと図るべきではないでしょうか。県庁本館の屋上にシンボル的に太陽光パネルを設置し広く県民に普及啓発を行ってはどうかと考えています。県内の多くの園児や小学生が県庁を訪問しています。その子供たちに太陽の恵みによって発電できるシステムを見せることは非常に大切ではないでしょうか。自然エネルギーの啓発効果は大きいと考えます。
 そのことが、県民、団体、事業者等への意識啓発及び地球温暖化対策の実践へと取り組むことにつながっていくと確信します。
 
 環境対策は、医療・福祉・教育と同様に金銭的な費用対効果だけで図れない面があることを、今一度、強く申し上げ、賛成討論といたします。